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6月, 2021の投稿を表示しています

寂しいのかもしれない

誰かに何かを言いたいような気持ち 誰かに話しを聞いてもらいたいような気持ち でも言いたい何かは  何もないので 下唇をかみ続けている 聞いてもらいたい話も  自分が聞いたこともないので ため息を付いてばかりいる 寂しいのかもしれない けど ヒトを呼び止めるのも億劫だ 話しかけるのも 話しかけられるのも 用意がない する気もない どうしようもない 手を切ったのは自分だから 繋がなかったのは自分だから 何もなくても それでいいのが一番良かったのに 何かがなくちゃいけないなんて 思い込んで あーあ こんなことなら こんなことなら 何をすればよかったのやら 後悔する心すら 薄れている 誰からも顧みられることなく 自分で省みることもない 対話なんて 今までできたことあるのかしら 独り言を交互に言い合っていただけかも ちょうど今 自分を自分で慰めているように 他人が羨ましいのか  それすら言い切れない  ただ言い知れないものがあって 解くことも 消すこともできずにいる これが ずっと続いて ただ老いて 死んで 消えていくのか いままで自分が 他の人に対して 他の人の孤独を その人自身の悩みと失意を 理解も 認識も 察しも 想像もしなかったように 理解も 認識も 察しも 想像もされずに それが避けがたい現実なのだとして それがたまらない 耐え難い  惨めだね  ©依田稽一

同託

目覚めてはいけなかった 眠るのが怖くなるから サイレンが遠いところで鳴っている それがなんの徴表かわからないまま 安堵と失望を経て 祈りの言葉を口にして ひとり床につく 慰めて 忘れて 夢を描いて その色が褪せていることに 落胆して 気づかないまま 気づかないふりをしたまま 昨日の続きが始まるのだ

恨恨として

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おいぼれに かかずらっている ひまはない 今日は明日のため 明日は今日のため 血みどろの胸の奥 空洞に脈打つ不安が なおも 誤りを許さない この望みを 手放さず 夢にも換えず 焦げ付いた痛みを 抱えながら おいて いく おいて いかれる 昨日のために今日が すり潰されていく 泣き出す代わりに 作り笑い とってつけたら へばりついてしまう 宛もないが いかなくちゃ いけないのか そんな笑みのままで たのむから おいて いかないで

空所に谺する

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来復せよ 来復せよ いつか来た道を 行き先も告げずに 追い落とされた雫が 垢すりの荒い目を盗んで 削がれたまま跛行する 昨日までは居たはずの 悩乱する害鳥たち 昔はともに居たはずの 落剥した告解たち 来復せよ 尸が泣き立てている 惴慄した泊まり船が 船出することなく帰港を待ちわびている 来復せよ 拠り所へ 縁を頼りに きっと はじめは 他でもない ここに 来復せよ 来復せよ

下書き

書いては消し 書いては消し 書いては消す 消しては書き 消しては書き 消しては書く 思いついては打ち消し 思いついては打ち消し 思いついては打ち消す 書くことのないこと 書かなければならないこと 書かなければならないことのないこと 殴り捨てたもの のような 書き捨てたもの のような いたづらに時間を差し出させるもの のような 怒りはもっとも しかし はじめから差し出す時間など持ってはいなかった 人の手に時間はない 時間の中に人はいる 常にいるわけでもないが… 時間は人を支配しない 時間は人を必要としていないから 人が時間をその必要に応じて支配するだけだ 時計 カレンダー 暦 そしていくつかの約束 明日はない 昨日もない 今日もない あることにしているだけ そういう詐術 長い時間をかけて培ってきた ヒトがヒトビトを騙すためのもの はじめからありもしないものになぞらえて 労働と安息の日を過ごす 繰り返してなどいないのに 繰り返していることにする その日を待っている その日を待ち望んでいる だから今日は下書きのまま ©依田稽一

希釈された尾頭付き仁粉の盛り切りについて(月報)

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間もなく配信終了です 間もなく配信終了です 間もなく配信終了です どうかそのままでお待ち下さい どうかそのままでお待ち下さい どうかそのままでお待ち下さい 三度くり返す (ことはなく) 三度くり返す (こともない) 即ち 誰でもない大衆に放たれた演説の中継ぎである 曰く 我ら党派性を超越して 今まさに未来を甦生せんがため 一人ひとりの在席を退席することにおいては 脇見にかけて果たされますよう (果たされますよう) その口火を切るものも その口火を消すものも 終に尽く果てますよう (果てますよう) 悄気込む柄杓の底抜けの明るさに 目を奪われる者共を都度修整することを 此処に誓います └―其処に誓います―――  └―彼処に誓います―――   └―何処に誓います―――    └―此処其処に誓います―――     └―其処彼処に誓います―――      └―彼処何処に誓います―――       └―何処此処に誓います―――        └―此処其処彼処に誓います―――         └―其処彼処何処に誓います――― 見事な一本 見事な螺旋 同志の惑志もまた同志 惑志の同志もまた惑志 代わり番こに生きようか 代わり番こに減らそうか あぁ、喉が渇く (どうかそのままお帰りください) しかし、喉が渇く (間もなく配信開始です) 喉から手が出るほど、乾く (どうかそのままお帰りください) 喉元過ぎれば、乾きを覚える (間もなく配信開始です) 間もなく配信開始です

種蒔き

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「夜の9時から11時のあいだに、この種を蒔くこと」 投函されていた封筒には、一枚の紙片と幾粒かの黒い種が入っていた なんの種なのかも 何月何日の夜9時から11時なのかも どこに蒔けばいいのかも わからない でも これが向日葵の種でないことはわかった 向日葵の種は見たことがあるから まあ なんの種なのかはわからないけど どこに蒔けばいいのかといえば ぼくんちの庭でないのは確かだ ぼくんちに庭なんかないから まあ 蒔くだけなら部屋の中でも 構わないけど それじゃ育たないだろうし 育たないことを知っていて 蒔くことと 捨てることに 果たして違いはあるのかしら 蒔け とは言われたけど 捨てろ とは言われていない せめて育つのを期待できそうな場所がいいだろう そして いつ蒔けばいいのか 別に期限なんかないだろうし 良い日も悪い日もないだろう ただ 早いほうがいい気がした 「夜遅くだしね」 夜の11時または23時を過ぎてしまったけれど 種を蒔きに来たよ ここは上から下へ いつも風の吹いている丘 北から南じゃないよ 上から下へ 殴りつけるように吹いてる 朝も夜も 夏も冬も これまでもこれからも きっとここなら育つんじゃないかな 左の手で体を支えていた僕は 右の手のひらをひらいて 痛みに耐えながら  僕の種たちを蒔いた すると僕の種たちは 地に落ちることなく ふよふよと漂いながら 天空へと吸い込まれていくかのように 天空へと吸い込まれていった 風は変わらず上から下へ吹いていた 僕は地に伏して泥をなめていたので 彼らの昇天を目にすることは叶わなかったが 封筒と一枚の紙片とを 破り捨てることはできた ざまあみろ これであいつらも 星々の仲間入りさ―― と思った矢先に 朝9時を知らせる鐘がなる 慌てて顔を上げてみると  鼻先に向日葵の花! 目のない顔で僕を見つめている その時 夜でもないのに影が差した あぁ あいつらひょっとして 太陽に灼かれちまってないかしら

じゃあどうすりゃいいのさ

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じゃあどうすりゃいいのさ、 って君は聞くけどもね 僕の方こそ じゃあどうすりゃいいのさ、 って返したいぐらいさ 答えがかんたんに出るなら そんな問いかけに大した重みもないよ どうすりゃいいのさって その問いをできるだけ 抱えて生きていくしかないんじゃないのかな 感情のまま 他人に投げかけても そもそも受け取れないんだよ 君が拾わなくちゃ 他の誰も拾えやしないんだよ 手のふさがっているやつか 手放したやつしかいないんだからさ 一緒に考えることなんてできないさ めいめい勝手に考えているのさ せーの、で一緒に始めてみたところで 僕が必死に考えている間に 君はどこかに行ってしまうだろうし 君が必死に考えている間に 僕はもうほかのことにうつつを抜かすだろうさ でも必死に考えているなら そんなことお互いどうでもいい筈だろう 自分が考えているとき 他の誰かが考えているかどうかなんて 自身のことを差し置いて 他人のことを考えられる人がいるなんて そんな嘘にまどわされちゃいけないね 自身のことを差し置いて 他人のことを考えてくれるだれかが 他ならぬ自分のことを考えてくれることを 期待しているんだろ 叶いっこない夢を見るのは勝手だけど 他人が他人自身を考える機会を 奪うのは良くないんじゃないか 結局のところ 他人を通してみたところで 自分のことを考えることしかできないのさ 一緒なんかじゃないね 僕と 君とが めいめい勝手に 僕自身のこと 君自身のこと 考えてるだけのこと じゃあどうすりゃいいのさ、 って 僕の考えたことは 伝えてみたよ これで全部じゃないだろうし これで終わりでもないだろうし 本当かもわからないし 間違っているかもしれない 君が理解できるかもあやしいし 僕自身が理解しているかもあやふやだし でもその誤解は正当だから 不当な理解をしてくれなけりゃかまわないさ だからあとはいつもどおり どうすりゃいいのか 君が考えてよ

軽さ、あるいは重さについて

自分の存在の軽薄さについてしみじみと感じることがある。 それは身軽さではない。 自分の望むままに身を処することのできるというような身軽さは、残念ながら、持ち合わせていない。 自分のことを、自分の知らないところで、自分の知らない人が、自分を知らないままに、自分の行く末を決めてしまうような、自分の軽さである。 決めるといったが、そこに「決定」などという重みすらない。誰の意識を引き止めることもない。 意識をとめられたら、とめられたで、いささかの迷いもなく、邪魔であると断じられる軽さ。 何か他のものを動かすときに、ついでに動かされたような軽さ。動かしがたいときには、嫌悪を催す軽さ。 だが、そういうことはある。 この世の中で、そのような軽さに身を置かない人が果たしているのだろうか。 ただ自分だけが、自分の存在の重みを、重く受け止めているからこそ、軽さに敏感でいられるだけのことかもしれない。 他人がそうであるように、自分もまた他人である。 他人にとっても他人であるし、自分にとっても一個の他人である。 ただ自分にとっての自分という他人は、ひとつ、もとい、ひとりしかいない。 それが我々一人ひとりが抱えている孤独の基本形態である。 だから、たとえ他人にとっての他人である自分が軽くても、自分にとっての自分の重みは、他でもない自分が認め、支えなければならない重みであろう。 その扱いの丁重さにかけては、他の人の及ぶところではない。 だが、その飛躍として、受胎した母親というものもまた在る。 いわば身重の存在である。 自分の重みに、他の生命の重みを内包した身体。 その重みは、その身だけの重みではない重み。 自分のことを、自分の知らないところで、自分の知らない人が、自分を知らないままに、自分の行く末を決めてしまうような、重みである。 誰もがかつてはその身の重さを、誰かの身の重さのうちに包まれていた。 きっとその時が、自分が最も重かったときだろうと思う。 この先、自分はただ緩やかに、そして急速に軽くなっていくことだろう。 その重みが回復することは決してないのだ。 せめて私の軽さを忘れて。 せめて私の重さを忘れて。 ©依田稽一

死体のふりをした自分の左目を 何度も突かれる夢

夢を見た。 夜。 死体のふりをしている自分が横たわっている。 いくつかの死体とともに、どこかに運ばれるのを待っている。 何も見えていないかのように 何も聞こえていないかのように 息を潜めている。 生きている人の気配をぼんやりと感じる。 手引をしてくれる女。 自分を疑っている男。 男は役付きで、部下を従えている。 「ほんとうはまだ死んでいないんだろ」 とでも言いたげに、男は自分の左目を爪の先でつつく。 痛みはないが、左目の奥まで何度も圧迫されるのを感じる。 自分は死体なのだから、反応してはならないと 自分は黙して耐えている。 男はしかし、左目を突くのをやめない。 トン、トン、トン、トン、トンと 一定のリズムで、執拗に、左目をつつき続ける。 女は黙ってみている。 部下も黙ってみている。 男も黙っている。 自分は死体のふりをしながら、左目を突かれる回数を数えている。 100を超えたあたりで、目が醒めた。

忘我

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一個の忘我 天空を仰ぎ見る筈が天井を見ゆ彼の目 我が身の感覚の拡散と透過を押し留める天蓋 身体の孤独の場所は皮膚をおいて他になし 瘡蓋を剥がしてなお脱落する精神 間接照明の眩さに 静脈を見つけられない 指先は触れた皮膚を忘れ 皮膚は触れられた熱を忘れ 皮下脂肪だけがその裏切りの記録を有している 口が裂けても言えない 笑顔の下唇に前歯の痕 そして忘我 また一個の忘我 明日が来る前の