種蒔き

ヒマワリの種 種子 画像 詩


「夜の9時から11時のあいだに、この種を蒔くこと」

投函されていた封筒には、一枚の紙片と幾粒かの黒い種が入っていた

なんの種なのかも

何月何日の夜9時から11時なのかも

どこに蒔けばいいのかも

わからない

でも

これが向日葵の種でないことはわかった

向日葵の種は見たことがあるから

まあ

なんの種なのかはわからないけど

どこに蒔けばいいのかといえば

ぼくんちの庭でないのは確かだ

ぼくんちに庭なんかないから

まあ

蒔くだけなら部屋の中でも

構わないけど

それじゃ育たないだろうし

育たないことを知っていて

蒔くことと

捨てることに

果たして違いはあるのかしら

蒔け

とは言われたけど

捨てろ

とは言われていない

せめて育つのを期待できそうな場所がいいだろう

そして

いつ蒔けばいいのか

別に期限なんかないだろうし

良い日も悪い日もないだろう

ただ

早いほうがいい気がした

「夜遅くだしね」

夜の11時または23時を過ぎてしまったけれど

種を蒔きに来たよ

ここは上から下へ

いつも風の吹いている丘

北から南じゃないよ

上から下へ

殴りつけるように吹いてる

朝も夜も

夏も冬も

これまでもこれからも

きっとここなら育つんじゃないかな

左の手で体を支えていた僕は

右の手のひらをひらいて

痛みに耐えながら 

僕の種たちを蒔いた

すると僕の種たちは

地に落ちることなく

ふよふよと漂いながら

天空へと吸い込まれていくかのように

天空へと吸い込まれていった

風は変わらず上から下へ吹いていた

僕は地に伏して泥をなめていたので

彼らの昇天を目にすることは叶わなかったが

封筒と一枚の紙片とを

破り捨てることはできた

ざまあみろ

これであいつらも

星々の仲間入りさ――

と思った矢先に

朝9時を知らせる鐘がなる

慌てて顔を上げてみると 

鼻先に向日葵の花!

目のない顔で僕を見つめている

その時 夜でもないのに影が差した

あぁ

あいつらひょっとして

太陽に灼かれちまってないかしら

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