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Re: パターンD

ラーズへ --- 僕の下半身が僕の詩を書く 僕の上半身は僕の下半身の代理に過ぎない (ちなみに僕の頭は飾りだ) 詩を書くのに必要なものは すべて僕の下半身が担っている 詩を書くのに腕なんかいらない 詩を書くのに指なんかいらない 詩を書くのに目も鼻も耳も口も 脳すらホントはいらなかったさ (詩を書く以外では要るんだけどね) 僕の下半身が僕をどこかに連れて行くから 僕はここでないどこかのなにかを 拾い集めて詩にできた 僕の下半身が僕になにかを命じるから 僕はなにもわからないままに 詩を書くことを 僕のなにもわかってない上半身に 命じることができた だから僕の下半身が僕の詩を書く 僕の上半身が自ら詩を書くことはしない そうして僕は書かせている 覚束ない僕の上半身に 僕の詩を そうして僕は書かされている 汗かきの僕の下半身に 僕の詩を --- 君の唐突なテストが気に喰わないのなら(実際、楽しくはないのだが)、僕は君への返事を止めることもできたのに、どうしてそうしないのだろう。なぜなら中途でやめてしまう方が楽しくないからだ、とでも言っておこうか。君の言うように、楽しさも、楽しめなさも、僕らのやり取りにとっては、なるほど余計なことでしかない。 でもいつだって僕らは、いや、僕は、その余計なことを期待してしまっているような気がするよ。結果的にがっかりするのだとしても、筆の勢いにつられてついつい蛇に足を書き加えてしまうような。何かをしてみたくてたまらないのかな。僕は君がきれいにまとめたように、苦しみの次に楽しみを置いたり、楽しみの次に苦しみを置くような真似ができないのかもしれない。苦しみは苦しみで、楽しみは楽しみだ。それぞれの予感に対しては、不安と期待だけだ。 つまるところ僕は君に、君のテストの中に僕をまるごと放り込まれているような気がしていた。そして君は君のテストの外に常にいるような気がしていた。遊びは遊びでも、僕は闘技場の中の選手として遊び、君は観客として遊んでいる。だから区切りに安堵するのは僕で、終わりに不満や不足を感じるのが君なんだろう。 どうかテスト結果を送ることだけはやめてほしい。次は楽しい話でも書いて寄越しておくれよ。 また会う日まで。 ザールより

パターンD

ザールへ ありがとう、返事をくれて。 君があまり楽しめていないとしたら、それは少し悲しいことではあるけれど、僕らのやり取りにとって少しも肝心なことではないから、結局は仕方のないことだ。もちろん、僕が君よりも楽しんでいることができていたとしても、僕らの通信に、そして君の認知テストに、何らの影響も及ぼすことはない。その事実は君にとって、楽しみの足しにも、慰めにもならないかしら。 課題を与えられる側からしてみたら、課題を与える側が常に楽しんでいるように見えるのかもしれない。でもそれは、課題に取り組む苦しみを、その時に見せていないだけのことだ。僕らは課題を生み出すという課題に取り組む苦しみを、ただ通り過ぎてきただけに過ぎないのさ。 君が楽しそうな僕を見て、それとよく似た楽しみを求めているのならば、ひょっとすると今の君の苦しみの先に何らかの楽しみがあるのかもしれない。けれど、苦しみありきの楽しみなのだとすれば、君の苦しみに相応しい君の楽しみがあるはずだし、それは僕の苦しみに相応しい僕の楽しみに似ているとは思えないし、君も思いたくはないだろう。 苦楽はその渦中で感じるものであって、評価・検証して外から定めてしまうものではない。僕らはいつまでも、あるいはいつからか、もしくはいつまでか、出たがり屋で、入りたがり屋で、宿なしの引きこもりなのだとしてもね。 パターンD-1 日本刀  アコーディオン  下半身  テレビ パターンD-2 カブトムシ  馬  カボチャ  包丁 パターンD-3 筆  ヘリコプター  パイナップル  ズボン パターンD-4 雀  ヒマワリ  のこぎり  ソファ 今回のパターンで、認知テストは完了だ。次のパターンを僕が君に送ることはない。 君の返信を待っているよ。 ラーズより

Re: パターンC

ラーズへ 君が限りある時間を割いて僕に問いを投げかけているように、僕も限りある時間を割いて君に答えを返している。そのことには互いに敬意を払うべきで、また常に割いた時間が僕らの問と解に見合っているのか、あるいは僕らの問と解が割いた時間に見合っているのか、他ならぬ渦中にいる僕らによって検証されねばならない。僕が逆に問いたいのは、それだけだ。 あぁ、書いていて思ったが、そんなことを気にするようでは君と僕との文通はとても遊びとはいえないね。遊びであるのなら、かけた時間に対して見返りを求めてはいけない。僕らのうちどちらかでも見返りを求めた途端、その遊びのなかで僕らを夢中にさせていた何らかの聖性が失われてしまう予感がする。有り体に言えば、白けてしまうだろうと思う。 だからここで問うべきは、僕らのやり取りが遊びであるかどうかではない。君が僕と遊びたいのかどうかだ。あるいは僕が君と遊びたいのかどうか。あるいは君が一人遊びをしたいだけなのか、あるいは僕が一人遊びをしたいだけなのか、はたまた一人遊びをしたい君と、一人遊びをしたい僕が、たまさか似たような遊びをしているだけなのか。 君が僕とは異なるかたちで、言葉遊びに興じたがっているのは薄々感じるのだけれどね。 ------  おやおや親指に  蝉が停まっていますよ  あらあら飛んで いきましたよ  おやおや親指に  蝉が停まっていますよ  あらあら鳴いて いきましたよ  おやおや親指に  蝉が停まっていますよ  あらあら震えて いきましたよ  おやおや親指に  蝉が停まっていますよ  あらあら着飾って いきましたよ  おやおや親指に  蝉が停まっていますよ  あらあら坐って いきましたよ  おやおや親指に  蝉が停まっていますよ  あらあら飛んで いきましたよ ------ 僕は君ほど楽しめてはいないのかもしれない。 夏の暑さには気をつけて。 ザールより

パターンC

ザールへ  お返事ありがとう。待ちわびていたよ。 今回の一連のテストについて、僕に何かしらの意図があるとして、それが確定されるためにはつまるところ僕と手紙のやり取りを続けるしかないことを理解している君を敬愛しているよ。意図なんかないかもしれないし、あったとしても君にとって時間を割くほどのものでもないかもしれないのにね。 ところで、「実のある遊び」と君は言うが、実なんかないほうが遊びとして正しいと僕は思う。遊び手にとって、遊びの結果に何かしら実益が生じるようでは、それは純粋な遊びとはいえない。本気で遊びたいのであれば、「遊ぶこと」以上の実が生じることのないよう、細心の注意を払うべきだね。遊び場があるかどうか、遊び相手がいるかどうかなんて二の次だよ。 まぁ、僕らが今やっていることが遊びなのか、遊びでないのかは議論の余地があるかもしれない。問題は、そんな議論が僕らにとって楽しい遊びになりうるかどうかだけれど。多分そうはならないって、君もなんとなく感づいてはいるだろうから、これこそいつか君が言った「いらぬ心配」に属することだろうけどね。 さて、近頃は前置きが長くなっていけないね。今回もまた、次に挙げるパターンのなかから選んだ単語に纏わる詩を書いて送ってくれるかな。 パターンC-1 スナイパーライフル  琴  親指  電子レンジ パターンC-2 蝉  牛  トウモロコシ  鍋 パターンC-3 ハサミ  トラック  メロン  ドレス パターンC-4 孔雀  チューリップ  ドライバー  椅子 君がどのパターンを選ぶのか、楽しみにしているよ。 またね。 ラーズより

Re: パターンB

ラーズへ 君のくだらないテストに続きがあったことに、僕は驚きを隠せないよ。僕の認知を心配したことはないと言うくせに、やめようとしないのはどういう意図があるのかな? 僕の認知は僕のものであるという言葉は、要するに君の玩具ではない、という意味でしかない。たとえ僕が僕の認知の玩具か、遊び場かであったとしても、君の玩具はここにはない。君の遊び場もここじゃない。どこか他の場所でやってくれ。 まぁ近頃は近所の公園も、遊具が取り払われてしまってただの空地になってしまっているようだから、子供すら遊び場を与えられないこのご時世で、君が君の遊び場を見つけられるかはわからないけどね。 ――― ペンギンは 銀のペンではない  ペンの銀でもない さりとて鳥でもない 生き物ですらない このペンギンは 部屋の隅に咲きそこねた 花瓶のスミレを手折った栞の 挟まれた図鑑の積まれた棚の 勉強机の地球儀の上の 南極の緯度経度の赤道直下に 群れも作らずに棲息している と閉じられたままのその図鑑に 書いてあると引用されている このペンギンは泳げないので 僕の部屋のなかで アメリカにもいけない ロシヤにもいけないし ヨーロッパにもいけず 中国にもいけやしない 日本にもいけないだけでなく オーストラリアにもいけないから 北極にもいけないのだ かわいそうだとは思わないよ だから僕は ちょっとトイレに 行ってくる ――― どのパターンを選んだのかは、今更書き加える必要もないよね? 君がもっと実のある遊びに興じられることを祈っているよ。 幸運を。 ザールより

パターンB

ザールへ 返事をくれて嬉しいよ。なんのかんのと言いながら、応えてくれるのが君の美徳だ。 予め断っておくべきだったが、僕は君の認知を心配したことはない。君の言う通り、僕が正確に測れるものでも、測るべきものでもないからね。 とはいえ、「僕の認知は僕のもの」というのは、実際正しいことだろうか。逆に君が君の認知のものかもしれないし、僕とて僕の認知の結果に過ぎない可能性はある。 あるいはザールはラーズの認知の産物かもしれないし、ラーズがザールの認知の被造物でさえあるかもしれない。 ともすれば君の詩が謳い上げたように、僕らそろって「オルガンの見た夢」の中のキャラクターなのかもね? それはともかく。 実は君の認知を試す課題は、前回だけで終わりではないんだ。よもや君も、ただ一度きりのテストで結果が出るだなんて、信じてはいないだろう。それに、ただ一度きりで判断されるなんて、不本意でしかないだろう? まぁ今度も似たような形式だ。下記のパターンから好きなものを選び、その言葉に纏わる詩を作ってくれたまえ。 パターンB-1 戦車  太鼓  眼  CDコンポ パターンB-2 蜻蛉  ウサギ  トマト  薬缶 パターンB-3 万年筆  飛行機  レモン  コート パターンB-4 ペンギン  スミレ  金槌  勉強机 条件は前と同じだ。よろしく頼むよ。僕にとっては急ぎではないから、好きなときに取り掛かってくれ。体に気をつけて。 ラーズより

Re: パターンA

ラーズへ また随分と不躾な手紙を寄越してきたものだね。 それほど僕も暇なわけではないのだけれど。 君に心配されずとも、僕の認知は僕のものであって、君の認知が試すべきものではない。 仮に僕の認知が衰えていると君が認めるのなら、僕はまず君の認知の衰えを疑うだろう。 それはさておき、僕は「パターンA-1」を選ぶことにする。 ――― オルガンの見た夢の中で 大砲の耳が張り裂けそうな 唸り声をひとつあげていた   ラジオの打ち出す弾丸が 不揃いの鍵盤をあべこべに叩くと パイプは神父の薄毛を吸い込み 自律した調べが符牒をあわせて 天へとつながる道を示す 四肢を失う盲の口が 飛んでる小麦を撃ち落とすと 猛々しい静寂が世に蔓延るのだ ――― 果たしてこれで、僕の認知をどう測れるというのか、甚だ疑問だけれど。 君の回答を期待せずに待つことにする。 元気で。 ザールより

パターンA

ザールへ 今日は君の認知を試してみたいと思う。 次に記すパターンの中から1つを選び、それに纏わる詩を書いてみてはくれないだろうか。 パターンA-1 大砲 オルガン 耳  ラジオ パターンA-2 天道虫 ライオン 筍  フライパン パターンA-3 定規 オートバイ 葡萄  スカート パターンA-4 鶏 バラ ペンチ ベッド 君はどのパターンを選んでくれても良い。 パターンの中の言葉をすべて使うもよし、幾つかは捨てるもよし、選択は君に任せよう。 いつもどおり、詩を記した手紙を返信してくれればいい。 君は君なりにやってみてくれ。 僕は君の解を期待せずに待つことにする。 ではまた。 ラーズより