下書き
書いては消し
書いては消し
書いては消す
消しては書き
消しては書き
消しては書く
思いついては打ち消し
思いついては打ち消し
思いついては打ち消す
書くことのないこと
書かなければならないこと
書かなければならないことのないこと
殴り捨てたもの
のような
書き捨てたもの
のような
いたづらに時間を差し出させるもの
のような
怒りはもっとも
しかし
はじめから差し出す時間など持ってはいなかった
人の手に時間はない
時間の中に人はいる
常にいるわけでもないが…
時間は人を支配しない
時間は人を必要としていないから
人が時間をその必要に応じて支配するだけだ
時計
カレンダー
暦
そしていくつかの約束
明日はない
昨日もない
今日もない
あることにしているだけ
そういう詐術
長い時間をかけて培ってきた
ヒトがヒトビトを騙すためのもの
はじめからありもしないものになぞらえて
労働と安息の日を過ごす
繰り返してなどいないのに
繰り返していることにする
その日を待っている
その日を待ち望んでいる
だから今日は下書きのまま
©依田稽一
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