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非恰當日記

口にしていることは大したことではない。 文字にしていることは重要なことではない。 誰かに聞いてもらっていることは大切なことではない。 口にしていないことのほうが大事だ。 文字にしていないことのほうが重要だ。 誰にも聞いてもらえないことのほうが大切だ。 たとえば表現力の欠如、という問題ではない。 なにか能力、機会、時間その他があれば達成されるといったたぐいのことではない。 むしろ表現してしまった途端、消え失せてしまうもの。 何かを口にしたときに、あえて言わなかったもの。 何かを文字にしたとき、あえて書かなかったもの。 何かを選んだときに、あえて選ばなかったもの。 喜怒哀楽ではないすべての感情。 愛でも憎しみでも羨望でも嫉妬でもない執着。 公でも私でもない空間。 朝でも昼でも夕でも夜でもない時間。 良くも悪くもない夢。 易くも辛くもない生。 充溢を知らぬまま空虚を抱え 幸福を知らぬまま不幸であることに怯え 本気になれないまま 本気でないことを暴かれることを 心底嫌悪しながら死んでいく。 不作為を 無根拠の喜びを 酒や薬で見せられたような夢を 是認する総ての試みに背を向けよ。 否、背さえ向けてはならぬ。 ご機嫌取りなど糞食らえだ。 楽しくない宴会はもう二度と始めるな。 誰もお前などに興味はないという事実から逃げるな。 必要は不要の裏返しではないのだから。 人が死んでいる。 人じゃないものも死んでいる。 人が生きている。 人じゃないものも生きている。 だからどうした。 おまえは誰だ。 言わぬが花を枯らした奴は。

しゃっくりの吃逆

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しゃっくり しゃっくり 一粒の 雨に打たれる鐘撞き堂 旧びた鐘から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 二桁の 猛り狂った女親 般若の面から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 三条の 光を潰すボールペン 掠れた筆から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 四支流の 元を辿った縞瑪瑙 歪んだ骨から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 五弁花の 野薔薇を摘んだ花筐 根無しの孔から出るしゃっくり しゃっくりしゃっくり 六道の 交差を逃した土踏まず 脚絆の隙きから出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 七世の 時代を渡った相府連 末期の弦から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 八布の 楊貴妃色の鯉幟 真黒い目から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 九星の 読み誤った種変り 年神様から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 出たしゃっくり 生まれたしゃっくり  から出るしゃっくり 止まったしゃっくり から出るしゃっくり わたしのしゃっくり から出るしゃっくり あなたのしゃっくり から出るしゃっくり しゃっくり しゃっくり 死んでもしゃっくり しゃっくり しゃっくり 出まかせしゃっくり

【選挙結果反映】横浜市長選挙2021の投票に向けた情報整理

一市民として、責任を持って選挙権を行使するための準備作業または情報整理。 すなわち個人的な備忘である。 ●選挙スケジュール  選挙はいつから? いつ投票に行けばいいのか? 告示:8月8日(日) 投票日:8月22日(日)  期日前投票についてや投票方法などは、特設ポータルサイト( https://senkyo.city.yokohama.lg.jp/ )を参照すればわかる。 ●投票率推移(年別、時間帯別) これまでの横浜市長選挙はどれくらい投票されているのか?      参考: 各種選挙データ コロナ禍のなかでどこまで投票率を伸ばすことができるか… 結果、前回より約11ポイント改善するも、過半数には届かず。 ●市長の仕事 そもそも市長の仕事とはなにか? 市民がより住みやすくなるようなアイデアの創出、それを実現するルール・条例案・予算案の市議会への提出。それが市議会で承認されたときの実行指示(参考: おしごとまるわかり図鑑|市長 ) ●市長の給料 市長はどれくらいの給料をもらっているのか? 年収: 2,578万円 (林文子市長、2020年の給与所得|参考: 共同通信の記事 )  市長:月額1,599,000円 ※副市長:月額1,285,000円(参考: ○横浜市常勤特別職職員の給料及び手当に関する条例・第3条 ) ●候補者情報一覧 どのような候補者が立候補しているのかの簡易的な情報まとめ。 ※適宜スクロールください。 ※正確な情報は個別にリンク先等を参照のこと。 ●選挙結果 候補者別得票数、法定得票数ライン、供託物没収ラインをグラフに反映。 得票トップの山中氏は法定得票数(有効投票数の4分の1以上)をクリア。 供託物没収(有効投票数の10分の1)未満は3名。 ※ちなみに 供託金は 240万円( 参考 ) 区(行政区画)別の得票割合(100%積み上げグラフ)。 おおよそ区による偏りは見られない。山中氏はいずれの区でも約3割の得票。 ●振り返りコメント インターネット選挙運動が解禁( 参考 )されてから幾年か経過したが、現実のところ、ネット上の活動は選挙の趨勢にどれほど影響を与えているのだろう。 上記候補者のSNS,ネット広告の露出具合を見てみると、ネット上の活動が支持層形成の最大要因とまでは言えないが、ネット活動に力を入れている候補者を見ると、...

小火・墓や・している 

なんだろうこのなんとも言えない感覚は 故人のおいしいエピソードとはなんだろう 故人の死が きっかけとなる集まり だがたいした思い出話もなく なんだか口にできる雰囲気でもなく その場に集った人々を楽しませようとする努力のあと 湿っぽいのが嫌なんだろうという空気 湿っぽいのを受け止めることのできない空気 笑いを止めることが躊躇われる それは 笑いを大事にしているというよりは 「笑いを失わされた人間」がもつ暴力性を恐れての臆病心 愛想笑い 疲れながら  変えることもできず 疲れている ああ 故人はもういないのだということ 生きていく人々の 暴力的なまでの生 死者は語らず 居らず 変わらず 生きているはずの自分も語ることはなく 居ることはなく 変わることはない なぜここにいるのかは自分でもわからず その理由を生み出そうという気概もない 愚か者なのかもしれない くだらない人間なのかもしれない でもどれもしっくりこない なにか つくらなくては つくるために

零度への接近

冷房を厭がる人は 空気が冷えるのを厭がるのではないか 閉じた空間の中で 気の回り 血の巡りが悪くなり 張り詰めた何かに包まれる 頭上や背後の隙間の無音 心臓や肺腑の隙間の無音 虚しくなり 動かなくなる  机の下から女の顔が覗いている 窓の外から男の顔が覗いている 真夜中に網戸に張り付いた蝉が鳴きつつ 交尾をはじめている 目は今日も開けない ©依田稽一

友達が亡くなった

友達が亡くなった。 正確には、友達が亡くなっていたという報せを受けた。 何ヶ月前かに、急に倒れて、だったそうだ。 今のご時勢を考慮して、通夜も葬儀も近親者で済ませたらしい。 上の話は、別の友人づてで聞いた話だ。 LINEで連絡をとっても既読がつかず、応答がなく、 不審に思って御実家に連絡をとったら、上記の経緯だったらしい。 そういう報せを自分は受けたのだ。 だから、まったく実感がない。 信じられないし、あまり信じたくない。 どのように処理してよいのか、すべきなのかもわからない。 有り体に言って、混乱している。 墓参りをして、墓石に刻まれているだろう名前を読めば、実感が湧くのだろうか。 実感というより、現実として、向き合うことができるのだろうか。 確かめなくてはならないという気持ちと、確かめてしまうのが恐ろしいという気持ちが混在している。 自分でもLINEを送った。DMを送った。電話をかけた。 既読はつかず、応答はなかった。 やはり本当のことなのか。わからない。実感もわかない。 わからないということが、おそろしい。さみしい。かなしい。 人の死、友人の死というものは、こんなにも現実感がないものだったのか。 それを世の中の人々は知らないのか。 知っていて、敢えて口にもしないのか。 いや、誰かが口にしていたとしても、自分にはわからなかっただろう。 自分が失わなくてはわからないのだ。 頭で理解することと、実感としてわかることとは違う。 自分を支えている「当たり前」の脆さを、痛いほど感じる。 仮に、今の自分が死んだとして、友人知人にも気づかれず、そのまま消えていくのだろうか。 亡くなったというあいつは、友人も多く、あまり人付き合いに熱心ではない自分にとってもありがたい存在だった。 そんなやつでも、通夜や葬式では友人たちには見送られないままなんて。 それが人の生と死の現実なのか。 いずれ自分もそういった途を辿るのか。 何を言葉にすればいい。 こんな日にもソシャゲの日課をこなそうとする自分がなんだか滑稽だ。 ちゃんとした形で、あいつを悼む機会はなかった。 でも、だからこそ、自分なりに悼まなくてはいけない。 他でもない自分のために。 なぜなら、亡くなったあいつのためにしてやれることはもうないから。 その現実と向き合って、生きなくてはならないから。

あの部屋の窓から

あの部屋の窓から僕は君を見つけた あの部屋の窓から私はあなたを見つけた 赤いジャケットの君を 青い瞳のあなたを その日から僕の部屋の世界地図には 君の場所を指し示す点が描き加えられた その日から私の部屋のもう一つの窓は 二度と開くことのないように閉じられた 僕の部屋のなかのこの城に 君を招きたい 私の部屋の糸紡ぎ機で あなたのドレスを仕立てたい この部屋の馬に乗って 君を迎えに この部屋の馬に乗って あなたに逢いに この四角い窓の向こうに見える君 この丸い窓の向こうに見えるあなた 見つめ合ったまま 人形のように動けなくなる 見つめ合ったまま 人形のように動かなくなる ©依田稽一

少女と荒野で縄跳びを

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一人の少女が荒野で縄跳びをしている 地面に足をつけたまま ブロンドを振り乱して 彼女は躓かない 脚には縄が掛からない 跳ぶことができないのは彼女の影だけだと 言わんばかりの笑顔で 一人の少女が荒野で縄跳びをしている 遠くで赤ずきんの母親と娘が通り過ぎる 少女は手を引く母親であり また手をひかれる幼子でもあった ふたりはどこへ向かうでもなく  口の端から現れた砂塵のなかに呑み込まれて消えた 一人の少女は荒野で縄跳びをしている 縄を跳び まばたきをするたび 瞳の映す景色が切り替わる 巨大な白馬の陰嚢 胸元いっぱいの赤いバラ 老いた人類が辛うじて突き破り産まれようとする卵塊 半熟の目玉焼きの首吊 そのほか 君の笑みを崩すに値しない 取るに足らない 浮遊したものの数々 君はけして疲れないが 今日は疲れたことにして 目を閉じて 縄を跳ぶ そして 荒野の中心 あるいは入り口に聳え立つ尖塔 を思い描く もちろん塔には立派な鐘を設えてあるのだけれど 今日はその塔の中の階で 誰かが君を待っている 赤いグリップの縄跳びを跳ぶ 白いドレスのブロンドの少女の 君の影がこんなにも 躍りはじめている

モンマルトルの眺めの向こう

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赤いベストの男が徐に口を開いた 「このグランマルニエを賭けて勝負しようか」 青いトンガリ帽子の男はレンガに腰掛けたまま沈黙している ふたりが向き合い、しかし決して目線は合わせないまま 幾ばくかの時が流れた 懐中時計はその針を着々と進め  青黄色の蝶々は  帽子の先に止まろうとしたまま中空で停止している ダイヤのクイーンは壁に磔にされ クラブのクイーンは地に伏し 残りはモンマルトルの眺めの向こうに去っていった 天井から金のチェーンで吊り下げられた指輪のなかに 薬指を囚われたままの男ふたりは つまるところ 何も賭けることができないのであった ©依田稽一