少女と荒野で縄跳びを


一人の少女が荒野で縄跳びをしている
地面に足をつけたまま ブロンドを振り乱して
彼女は躓かない 脚には縄が掛からない

跳ぶことができないのは彼女の影だけだと
言わんばかりの笑顔で
一人の少女が荒野で縄跳びをしている

遠くで赤ずきんの母親と娘が通り過ぎる
少女は手を引く母親であり また手をひかれる幼子でもあった

ふたりはどこへ向かうでもなく 
口の端から現れた砂塵のなかに呑み込まれて消えた

一人の少女は荒野で縄跳びをしている
縄を跳び まばたきをするたび
瞳の映す景色が切り替わる

巨大な白馬の陰嚢
胸元いっぱいの赤いバラ
老いた人類が辛うじて突き破り産まれようとする卵塊
半熟の目玉焼きの首吊

そのほか 君の笑みを崩すに値しない
取るに足らない 浮遊したものの数々

君はけして疲れないが 今日は疲れたことにして
目を閉じて 縄を跳ぶ

そして 荒野の中心
あるいは入り口に聳え立つ尖塔
を思い描く

もちろん塔には立派な鐘を設えてあるのだけれど
今日はその塔の中の階で
誰かが君を待っている

赤いグリップの縄跳びを跳ぶ
白いドレスのブロンドの少女の
君の影がこんなにも 躍りはじめている

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