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Re: パターンB

ラーズへ 君のくだらないテストに続きがあったことに、僕は驚きを隠せないよ。僕の認知を心配したことはないと言うくせに、やめようとしないのはどういう意図があるのかな? 僕の認知は僕のものであるという言葉は、要するに君の玩具ではない、という意味でしかない。たとえ僕が僕の認知の玩具か、遊び場かであったとしても、君の玩具はここにはない。君の遊び場もここじゃない。どこか他の場所でやってくれ。 まぁ近頃は近所の公園も、遊具が取り払われてしまってただの空地になってしまっているようだから、子供すら遊び場を与えられないこのご時世で、君が君の遊び場を見つけられるかはわからないけどね。 ――― ペンギンは 銀のペンではない  ペンの銀でもない さりとて鳥でもない 生き物ですらない このペンギンは 部屋の隅に咲きそこねた 花瓶のスミレを手折った栞の 挟まれた図鑑の積まれた棚の 勉強机の地球儀の上の 南極の緯度経度の赤道直下に 群れも作らずに棲息している と閉じられたままのその図鑑に 書いてあると引用されている このペンギンは泳げないので 僕の部屋のなかで アメリカにもいけない ロシヤにもいけないし ヨーロッパにもいけず 中国にもいけやしない 日本にもいけないだけでなく オーストラリアにもいけないから 北極にもいけないのだ かわいそうだとは思わないよ だから僕は ちょっとトイレに 行ってくる ――― どのパターンを選んだのかは、今更書き加える必要もないよね? 君がもっと実のある遊びに興じられることを祈っているよ。 幸運を。 ザールより

パターンB

ザールへ 返事をくれて嬉しいよ。なんのかんのと言いながら、応えてくれるのが君の美徳だ。 予め断っておくべきだったが、僕は君の認知を心配したことはない。君の言う通り、僕が正確に測れるものでも、測るべきものでもないからね。 とはいえ、「僕の認知は僕のもの」というのは、実際正しいことだろうか。逆に君が君の認知のものかもしれないし、僕とて僕の認知の結果に過ぎない可能性はある。 あるいはザールはラーズの認知の産物かもしれないし、ラーズがザールの認知の被造物でさえあるかもしれない。 ともすれば君の詩が謳い上げたように、僕らそろって「オルガンの見た夢」の中のキャラクターなのかもね? それはともかく。 実は君の認知を試す課題は、前回だけで終わりではないんだ。よもや君も、ただ一度きりのテストで結果が出るだなんて、信じてはいないだろう。それに、ただ一度きりで判断されるなんて、不本意でしかないだろう? まぁ今度も似たような形式だ。下記のパターンから好きなものを選び、その言葉に纏わる詩を作ってくれたまえ。 パターンB-1 戦車  太鼓  眼  CDコンポ パターンB-2 蜻蛉  ウサギ  トマト  薬缶 パターンB-3 万年筆  飛行機  レモン  コート パターンB-4 ペンギン  スミレ  金槌  勉強机 条件は前と同じだ。よろしく頼むよ。僕にとっては急ぎではないから、好きなときに取り掛かってくれ。体に気をつけて。 ラーズより

【年表】世界の詩人_生没年(2022年5月現在、5地域113名)

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 はじめに 世界の詩人の生没年をまとめた年表を作成しました。 個人の勉強用に整理したものですが、せっかくなので公開します。 よろしければご参照ください。 1. 年表イメージ 作成年表のキャプチャ画像(THE TIMELINEで作成) 詩人の生年から没年までを帯状に表現しています。 地域ごとに、活動していた詩人の歴史的な流れを概観できます。(通時的把握) 同時代に生きていた別の詩人についても概観できます。(共時的把握) 2. 年表作成ツール 年表作成には、『 THE TIMELINE 』のサービスを利用しています。 Googleスプレッドシートで作成した表を、前掲の画像のように変換してくれるサービスです。 無料ですが、作成した年表は公開必須で、広告は表示されてしまうようです。 3. 年表シートのリンク先 年表シートは、下記リンク先から参照することができます。 世界の詩人_生没年 | 年表作成サービス「THE TIMELINE」 世界の詩人_生没年 | 年表作成サービス「THE TIMELINE」 app.the-timeline.jp 4. 操作の補足説明 左上の「▼」「▶」で地域別に折り畳み・展開ができます。 詩人の帯をタップ・クリックすると下記の吹き出しが表示されます。 詩人をクリック・タップすると表示される項目 上から 詩人の名前 生年月日〜没年月日  おおよその没年齢 Wikipedia個人ページへのリンク(短縮URL) です。 詩人についての詳細を知りたい場合は、リンクからWikipediaを参照することもできます。(日本語版記事がない場合は英語版にリンクしています) 5. 掲載情報についての補足 1. 詩人の選び方 参考にしたのは、『世界文学全集: 世界詩集, 第 48 巻』(講談社、1972)に収録されている詩人です。 そのため現時点、取り上げている詩人は中世〜近世以降の欧米露の詩人に偏っています。(古代ギリシャや日本を含むアジア圏に等は未記載) また、年表に反映させるための現状の条件としては、 Wikipedia個人記事があること 存命人物でないこと くらいでしょうか。 掲載している詩人名の一覧は、下記個人ページにてまとめています。 (2022年5月現在、113名) 詩人年表 詩人 年表 世界の詩人 生没年の年表...

Re: パターンA

ラーズへ また随分と不躾な手紙を寄越してきたものだね。 それほど僕も暇なわけではないのだけれど。 君に心配されずとも、僕の認知は僕のものであって、君の認知が試すべきものではない。 仮に僕の認知が衰えていると君が認めるのなら、僕はまず君の認知の衰えを疑うだろう。 それはさておき、僕は「パターンA-1」を選ぶことにする。 ――― オルガンの見た夢の中で 大砲の耳が張り裂けそうな 唸り声をひとつあげていた   ラジオの打ち出す弾丸が 不揃いの鍵盤をあべこべに叩くと パイプは神父の薄毛を吸い込み 自律した調べが符牒をあわせて 天へとつながる道を示す 四肢を失う盲の口が 飛んでる小麦を撃ち落とすと 猛々しい静寂が世に蔓延るのだ ――― 果たしてこれで、僕の認知をどう測れるというのか、甚だ疑問だけれど。 君の回答を期待せずに待つことにする。 元気で。 ザールより

パターンA

ザールへ 今日は君の認知を試してみたいと思う。 次に記すパターンの中から1つを選び、それに纏わる詩を書いてみてはくれないだろうか。 パターンA-1 大砲 オルガン 耳  ラジオ パターンA-2 天道虫 ライオン 筍  フライパン パターンA-3 定規 オートバイ 葡萄  スカート パターンA-4 鶏 バラ ペンチ ベッド 君はどのパターンを選んでくれても良い。 パターンの中の言葉をすべて使うもよし、幾つかは捨てるもよし、選択は君に任せよう。 いつもどおり、詩を記した手紙を返信してくれればいい。 君は君なりにやってみてくれ。 僕は君の解を期待せずに待つことにする。 ではまた。 ラーズより

駅で男は目覚めた:

 駅で男は目覚めた。そんなことは露知らず、遠い異国の地で眠りについた女がいた。女の名前はエミリー、あるいはイヴ、あるいはジャンヌ、あるいはキャロライン、あるいはネリー、あるいはノリコであった。女は美しい女だった。どの程度美しいかと問われれば、その女を見たことのない人々の、各々の想像力が「美しい女」をイメージし、そのイメージを形作り、そのイメージを一定の期間、保持する程度を損なわない程度には美しかった。そして女は眠りについていたので、以降、女の美しさが損なわれていくことも、消耗していくことも、減衰していくことも永遠になかった。その美を損なおうとする何ものも、その美を損なうことなしにその美によって損なわれ、その美を消耗させようとする何ものも、その美を消耗させることなくその美によって消耗させられ、その美を減衰させようとする何ものも、その美を減衰させることなくその美によって減衰させられていた。人々の小さい腕に許されていたのは、ただその美から、人々を徐々に遠ざけることのみだった。1人の男は、女を呼ぶのではなく、女の名を呼ぶことで、女を遠ざけた。1人の男は、女を見るのではなく、女の絵画を見ることで、女を遠ざけた。1人の男は、女に触れるのではなく、女の皮膚に触れることで、女を遠ざけた。1人の男は、女の息を聞くのではなく、女の声を聞くことで、女を遠ざけた。1人の男は、女を想うのではなく、女の想い出を想うことで、女を遠ざけた。1人の男は、女を知るのではなく、女の知を知ることで、女を遠ざけた。1人の男は、女を遠ざけるのではなく、女から遠ざかることで、女を遠ざけた。女は眠りにつきながら、男たちの枕元で、つまりは男たちの人生から最も遠い場所で、歌のようなお喋りを続けている。「あたしはあたしのことをあたしが呼ぶよりも快く呼ぶあなたを待っていたわ。あたしはあたしのことをあたしが見るよりもよく見るあなたを待っていたわ。あたしはあたしのことをあたしが触れるよりも優しく触れるあなたを待っていたわ。あたしはあたしのことをあたしが聞くよりもうまく聞くあなたを待っていたわ。あたしはあたしのことをあたしが想うよりも深く想うあなたを待っていたわ。あたしはあたしのことをあたしが知るよりも多く知るあなたを待っていたわ。あたしはあたしのことをあたしが遠ざけるよりも、もっと遠ざけるあなたを待っていたわ。あなた...

駅で男は目覚めた――

 駅で男は目覚めた。正確には、目覚め損ねた。目覚め損ねるという過ちを犯すことを、これほど正確にしてのけることは、未だかつて男の目覚めに際して起こり得なかったことである。おそらくは夢の中でさえ、男がこれほどまでに目覚め損ねることはなかった。男はうーんうーん、と唸り声を上げるが、それは欠伸でも、起き抜けに気道を開こうとする試みでも、声帯の自発的な準備作業でもない。男の精神は確かに目覚めに向かっていたのだが、男の身体は正反対に眠りへと落ち込もうとしていた。男は精神と身体に引き摺られるままに、目覚めと眠りの間で引き裂かれていた。男は2つの側に引き裂かれていたが、眠りと目覚めの往復運動の繰り返しに伴い、頻度と個数でいえば2つ以上に引き裂かれていた。男は、男が2度以上引き裂かれていることはわかっており、それゆえに男が1つではなく2つ以上の断片に分けられていることを数え上げることはできていたが、それは男が引き裂かれていることを認識していたからにすぎず、男が果たして幾度引き裂かれ、幾つの断片と化してしまっているのかは数えられずにいた。だが、未だ男は男が断片であることを認識する程度には、男としての総体を維持し、再度の統合を希求することへの欲望を捨てずにいた。男の精神と身体は、「あちら」と「こちら」に引き裂かれていたが、「あちら」の男の断片にとっては「あちら」といってもそれは「こちら」であり、むしろ「こちら」の断片のほうが「あちら」にとっては「あちら」の断片であった。それは取りも直さず「こちら」の男の断片にとっては「こちら」が「こちら」であることを意味したまま、「あちら」の男の断片にとっては「こちら」も「あちら」であることを意味することを否定しなかった。ゆえに男の統合への欲望は、果たして「あちら」へと赴くのか、それとも「こちら」へと戻るのか、どちらの方向性も与えられずに、留保されていた。男は「あちら」と「こちら」のどちらに優位性――統合の主導権、主たる位置を占めるか――を与えるのかを決めかねる故に、方向性の賦与を留保していたというよりは、Aの断片がBの断片に統合されようと、Bに向かって集合しようと移動する際、まさにその同時期にBの断片がAの断片に統合されようと、Aに向かって移動するすれ違いを危惧するがゆえに、移動のきっかけとなる何らの意思表示も顕せずにいた。男は夢の中にいるがゆ...