紙コップが話しかけてきた話(3)
だからこそ俺は、コップに対して「どちらが上で、どちらが下か?」を単刀直入に尋ねたのである。俺のほうが紙コップに対して、何らかの意図をもって接しているのであれば、コップの上下は問うまでもない(どちらが上でも下でも、俺にとってはどうでもいいことだから)。ところが今は、紙コップのほうが、俺に対して何らかの意図をもって、話しかけてきているのである。であれば、紙コップの上下について、当の紙コップに対して問うことに、なんの問題があるのだろうか?
此方の切実で、簡明で、至極真っ当な疑問に対して、紙コップは、自身の上下がどちらにあたるかといった端的な回答や、紙コップにとっての上下がかように定義づけられることとなったその論理的背景や歴史的事由を、理路整然と述べたてるのではなく、呆れたような溜息一つで応答した。
「やはりお前は、数も数えられない馬鹿みたいだな」
紙コップは哀れみを込めてそう吐き捨てた。
「なんだと」
「この俺が組み込まれている紙コップの総数を数えてみろ。上からでも下からでもいい」
些か此方の苛立ちが募ってきたが、言われるがまま数えることにした。下から、紙コップが1、2、3…。
「全部で何カップだ?」
「…11」
「では今のお前にとってでいいが、下から6番目の紙コップは?」
「……これだ」
「じゃあ次に反対方向の、上から6番目にあたる紙コップは?」
ここにきて、この紙コップが言わんとしていることが、ようやく俺にも分かった。
上 〇 1
〇 2
〇 3
〇 4
〇 5
◎ 6
〇 5
〇 4
〇 3
〇 2
下 〇 1 重ねられた紙コップ×11
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