君は荒野へ繰り出した
君は荒野へ繰り出した
風にそよいだ葦を見に
夜
吹き消された灯火を
升の下に覆い隠して
髪の毛を黒く焦がす
小犬にパンをあげましょう
子羊から取り上げたパンを
歯ぎしりする歯もなく
追い出される家もなく
闇を感じる視力もない
ただ涙と涙
また涙
教会で叫べないから
墓場で叫ぶのですか
街中で叫べないから
山中で叫ぶのですか
あのひとが忘れたからだを思い出すため
かれはその身を石で滅多打ちにしただけ
耳のきこえない耳
口のひらけない口
おまえたちは念入りに
始末されてしまったから
塩気をつけたあと焼いたのに
内なる火をさがすのをやめた
2000年前のぶどう酒は新鮮で
2000年前の革袋は新品だった
2000年後のぶどう酒入り革袋は
野薔薇の葡萄を摘んで入れて
茨のいちじくを採って入れて
かき混ぜてしまえばきっと新しい
風は風であることを忍ばないまま
葦は葦自身を信じられないまま
蛆は食い荒らすことを望まないまま
肉は耐えることに耐えられないまま
夜
盗人のようにやってくる
盗人ではない
なにか
ぼくにはあなたが見えないからと
君は荒野へ繰り出した
風にそよいだ葦を見に
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