死と農夫の忘れられた踊り
死と農夫がダンスを踊っていた
くるくるくるり くるりくるくると
さようなら貴族 さようなら知識 さようなら美
これまでのあらゆる積み重ね 円熟あるいは新鮮さよ さらば
荒野で独り ひとしきり泣いたあとの 夕焼けに照らされた空白の時間も
凍てつく冬の日に 明るい居間で 温かいスープで 僕を迎えてくれた母の愛も
見知らぬひとの 誰かを呼ぶ声も 逸らされた目線も 残り香すらも
すべて すべて すべて
このダンスの向こう側へといってしまった
愛のあとを悲しみが追いかけていった
快の後ろを不快が追いすがっていった
言葉の後を沈黙が先回りして 言葉の行き場を失くし
罪業が懲罰を置き去りにしてしまった 責任が自由を追い越してしまった
正義は復讐と勘違いされ 復讐は因果と仲違いをさせられた
死の髑髏が 踊れ踊れ踊れというのだが
俺の髑髏は 転べ転べ転べと歌うのだ
望むと望まざるとに関わらず
私は望むべきことを望めなかったし 望むべきでないことを望んできた
彼の踊りはただ転ぶ前の振りに過ぎず 彼の転倒は踊りの振りでしかなかった
望むと望まざるとに関わらず いつだってそうであり いつもそうじゃない
黙って転べ 踊りをやめろ 農夫よ 死にそれをやめさせよ
と誰も命じることができなかった 命じさせることを命じることもできなかった
光なき太陽 熱を奪う火 湿り気のない水 正気に戻った月
嘆くなと諭されることの嘆かわしさ
笑えとせっつかれることの笑えなさ
良い言葉なんて評が言葉に対する侮辱でなくて何であろう
心を和らげることが心に対する暴虐でなくて何であろう
生まれるやいなや お前は俺に踊りを仕込んだ 俺はお前に仕込まれた
生まれるやいなや 俺はお前に貸し付けられた お前は俺に借りさせた
はじめからすべてが仮なのだとしたら俺にとってほかに真があるのだろうか
これまでのすべて これからのすべて 不当であり正当であるものたち
旅をさせられたものたち 己にとって この地にとって 異邦人である皆
みんなみんなみんな 死と踊り 農夫と寝る そして転ぶ
くるくるくるり くるりくるくると
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