クーラーボックスのなかに
表面がボロボロのクーラーボックスのなかに
収まりのいい君が納まろうとする
暑いから? 寒いから?
いいや、自分の纏う冷気を自分ごと閉じ込めてしまいたいから
そのままいつか誰かに何処かへ運んでもらうのが
残された君に残された夢らしい夢と言えるものではなかったか
でもそのちっぽけな自尊心がはみ出すから
蓋が閉じないんだよ 冷気が漏れ出てしまうんだよ
はやく腐ってしまうんだよ はじめから腐っているにせよ
釣った魚はキライ サバくのも サバかれるのも御免
でも期限ギリギリの半額のやつは好きだ
価値が半分になっているものの価値がもっとも高い
上げようも下げようもない はんぶんこだ 君と僕とで
ドライ・アイスに水ぶっかけて 欲情する君に
泥付きの万能ネギでも贈ってやればよかったか
見つかりもしない「現代」に急かされて
冷えた箱に収まろうとする君の君らしさに
僕は僕らしさを投棄するべきだったのだろうか
まだ米を研いでいないから お先にどうぞ
「わかった」と わかっていないときにかぎって口にする
君の誠実さとこれでお別れだなんて寂しい気がする
察しの悪い僕の舌に君の得意料理
ため息だかゲップだかもわからない白い息とともに
君はクーラーボックスへとおさまった
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