ティレシアースの鼓動

 

老人 杖 冥府 画像 詩

過去の誰かの将来の楽しみのために

産み出された稚児の皺苦茶に瞑られた眼

暮しに祈る神もなく 旅の無事を願う人もなく

風に孕まされた帆の放り出す 推進力により

舳先よりも先へ 鼻先よりも先へ

水平線の向こうの世界の果ての空の底の冥府へ

赤子は泣き泣き育ち いまや老人と成り果てていた

いかな過去よりも遠い 遠い耳鳴り の残響

おまえに何一つ過去は与えられず

ただ永遠に続く現在の闇のなかで

未来を照射する視線だけが与えられたのだ

おまえの唯一の光は 他人にとっては深い闇

おまえは一歩も進めない おまえには盲進が許されていない

ただ杖をついて立つだけ 蹌踉めけ孤狼 谷の狭間で

おまえには知だけだ 知だけが許されている

その知を用いることも 広めることも許されぬ

英雄に 導を示し その末を識らしめる

その「必要」だけが おまえの口を開かせてよい

あとは黙し おまえにとっては何一つ「必要」ではない

無数の知識を その禿頭の内で転げ回らせておくがよい

千切れ飛ぶ雲の 一片一片の 行き先を

波が掻き混ぜる泡の 一粒一粒の 炸裂を

月明かりと暗闇の 境界線の 前進と後退を

定められるまま 定められた さだめ

移ろいゆくまま 移ろわされた うつろ

知るべきでない 道標ばかり 拾い集め

楽しみも 期待も 望みも 捨てた

ただの影と化して なお 感じるリズム

跡切れ跡切れの それが

許され止まる ときを待つのみ



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