濡れ衣を纏う天使のような

画像 海中 水中 詩


わたしは水底へ何かを探しに潜っていった

小さな弟を背に抱え
息を潜めて沈んでいく

明滅する水泡
黒い岩場に擬態した珊瑚礁 

面と底の天地がひっくり返り
藻掻く腕より 脳が足掻く

そうだ わたしは
泳げないのだ

背なの弟の体温で 
水中の暗さを忘れていた

その肌もいまや刺すように 冷たい
鼻腔から眼窩へ 風が通り抜ける

そのとき 何か大きな影がわたしの視界を覆った
次の瞬間

わたしは陽射しが照りつけるプールサイドで
嘔吐する弟の傍らにいた

なんと青白い肌!

背中を擦り 弟の汚物を
水浴場のなかへと 注ぎ込むわたしは

濡れ衣を纏う天使のような幼子に 怒鳴られている
耳は聞こえないが 金切り声の似合う剣幕だ

至らずに申し訳ないと 頭をひとつ丁寧に下げた
そのまま差し出した首を 落とされても良かったのだが

その時にはもう悶え始めていたのだ
夏をつづける理由が

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