孤独のスクリーン
なぜ黙ってしまったの
なぜ喋ってしまったの
話したことで救われた気持ちになっても
黙っていて救われない気持ちの誰かは黙ったまま救われないでいるの
ベンチで独り 時間を食んでいるほうが それを忘れられるの
誰かと笑いながら 肉片を分け合うほうが それに貫かれてしまうの
過去の誰かの孤独を振り返ってみて
過去の孤独ではない誰かを置き去りにして
それだから 100億の孤独では足りない
無限の 世界のなかで区画された孤独
溶け合うことのできないまま
ひとりひとりが 溶けて溢れて
垣根を越えて 漸く溶け合うの
いつか
−−−−−−−
口をぽかんと開けて
息子の訃報を聞いた老婆
その口内の暗闇の中へ 剥ぎ取られたスクリーンが捻り込まれていく
白くきめの細かい生地が 蜜柑の皮のように千切れそうで千切れない
あぁ あぁ 嗚咽が 舞台袖から聞こえてくるのに
桟敷席には 呆れたような溜息が 満ちている
観客の顔は皆おなじ 老婆の死んだ息子の顔
おかあさん
これが孤独だよ
なんてヤジを
誰も飛ばさない
あぁ
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