倥偬

高層ビルの隙間の空から

一ツ目の巨人が覗き込んでいる

口もなく 鼻もなく 耳もない 真黒な巨人

ガラス窓の照り返しに皮膚を焼かれながら

道行く人々を凝視している

晩夏 

人々は地に目を伏せたまま あるき続けるので

巨人には気づかない

太陽と 自分の 間に

差し挟まれている巨人の影に

隠れて いきつくこともないまま

巨人がふいと目を逸らす

目線はぐるりと

腕時計

乳母車

街路樹

電灯

銅像

を通過していった

再び道行く人々に視線を落とした巨人は

数瞬後 諦めたように目を閉じ

それとともに姿を消した

人々と 太陽の間には

もうなにもない


©Keiichi Yoda

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