二輪馬車と蜃気楼の町
乾ききった砂漠のなかに町がひとつ
ぼんやりと浮かんでいる
白い建物が並び 一筋の影も差さず
まるで金星の赤道直下のようだ
そんな町に向けて二輪馬車がひとつ
ゆっくりと進んでいる
真っ赤な車輪に ペール色の荷台
馬は金色 馭者は空色
荷台の上には幽霊が独り
陽光に揺らめいて輪郭を失いながら
陽光に揺らめいて輪郭を失うあの町へ向けて
ゆっくりと進んでいる
さぁ いま 到着だ――
車輪が町の境界を越えた途端
幽霊は自分のベッドで目覚める
あぁ また 着かなかった――
そして幽霊はベッドから這い降り
髭を整え 襤褸を纏う
空色の馭者を叩き起こして
金色の馬に餌と水をやり
馬車の荷台にペール色の屋根をかけ
真っ赤な車輪を指でなぞりながら
夜が明ける前に出発する
乾ききった砂漠のなかで
輪郭を失い続けているあの町へ向けて
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