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スカラムッシュは一つのことしか考えない

スカラムッシュは一つのことしか考えない。 一つのことしかないゆえに、その一つが、 いくつかあるものの中の一つであるとは考えない。 その一つを選んだわけではない。その一つが全てである。 一つのことしか考えないゆえに、一つのことを区別しない。 分類しない。解剖しない。複製しない。消却しない。 すなわち理解しない。肯定も否定もしない。 それは我でも汝でもない。自でも他でもない。 スカラムッシュは一つのことしか考えない。 スカラーでもなく、ムッシュでもなく、スカラムッシュとして考える。 スカラムッシュはスカラムッシュのことを考えない。 スカラムッシュは考えることについて考える。 考えることについて考えているうちは、それがただ一つのことである。 考えることについて考えることをやめたスカラムッシュはスカラムッシュではない。 考えないスカラムッシュはスカラムッシュではない。 いくつかのことについて考えるスカラムッシュはスカラムッシュではない。 いくつかのことについて考えないスカラムッシュはスカラムッシュではない。 考えたり、考えなかったりするスカラムッシュはスカラムッシュではない。 スカラムッシュは一つのことしか考えないゆえに。 おそらくたくさんのスカラムッシュがいる。 スカラムッシュでないものもいるが、いくつものスカラムッシュであるような スカラムッシュが幾人もいたことだろう。 私はスカラムッシュではないし、スカラムッシュに会ったこともない。 スカラムッシュでない者の数は、スカラムッシュを増やしも減らしもしない。 スカラムッシュは一つのことしか考えないスカラムッシュだから。

宇宙の始まる前、切り取られた左耳に語られた13のこと

 切り取られた左耳はビックバンの3秒前の時空間に固定すること  切り取られたのは左耳を痛みから遮断するための処置であること  鼓膜と内耳と三半規管の間に分かちがたく疼痛は持続していたこと  音は拾えていたこと  3の条件が満たされている場合に、1は予定されていたことは予告済みであること  右耳の協力は得られなかったこと  エーテルは本件に無関係であること  4−7に関しては、他に開示して差し支えないこと  花の香りを感じることがあるが、副作用の一部として報告された事項であること  所有権移転は留保されているが、1の領域外においてはその限りではないこと  1−10の変更の際には事前の予告が必要であるが、同意は必要ではないこと  1−11の変更履歴情報は予告なく削除されないが、自動保存される仕様ではないこと  希望すれば鏡台を設置することが可能であること

短歌まとめ(2022年9月、22首)

  #今日の短歌    でつぶやいた短歌のまとめ。

なにもよくはないから

同意してほしいんだね わかるよ わかるんだけどね そうだね いいね っていうのは 僕にとっては嘘なんだ 嘘をつくのはいいけれど 嘘をつかせられるのは嫌なんだ 僕自身に嘘はつけない なんて自分を騙すから 下手くそな愛想笑い どっちつかずな返事をするんだ  ごめんね 悪いとは思ってないけど 君のいうこと ダメだとも思ってるわけじゃないんだよ  事実と評価の境目が曖昧で一方的で断定的で楽観的で悲観的で 元の形もわからなくなるほどに削ぎ落とした現実の断片を それが全てだと言わんばかりに引き伸ばして強調してるけど (ここまではまぁ 誰でもやっているよね) 問題はさ そんな意見の限界を 君がわかっていないふりして 僕にもわからないふりをさせようとしてくるところなんだよね わからないことはわからないっていう 誠実さすら捨てさせてさ 穴だらけのくせに 穴を指摘するのもバカだし 穴を無視するのも罪だし 現実の穴を塞ごうという気もない君の意見の穴なんか 君が現実を変えるために努力してるんだってポーズを見せたいと端から思ってなきゃ 僕のほうでも気にはしないんだけどさ 知らん顔して後で穴埋めするのは僕なんだよ はぁ これはお説教じゃないんだ 愚痴なんだ  友達なら愚痴ぐらい聞いてくれないかい? 君の愚痴なんか聞きたくないんだ って僕の愚痴を (されて嫌なことを他人にするな? そのとおり いいお説教だね!) ほんとうに言いたいことはそんなことじゃないんだよね それはわかるんだけど ごめんね 君自身がほんとうに言いたいことを探しているんだよね それもわかるんだけど ごめんね 「ほんとう」ってなんなのか わかんなくなってきちゃったよ ごめんね ごめんなさい 

『ココア共和国2022年10月号』佳作掲載と感想

 拙作「正しくはカメムシ目・ヨコバイ亜目・セミ上科の胸部」が、詩誌『ココア共和国2022年10月号』●投稿詩佳作集Ⅰに掲載されました。佳作集は電子版のみの掲載です。 ココア共和国|あきは詩書工房|月刊「ココア共和国」10月号 「とにかくみんなで詩を楽しもうよ」ということが目的のB6版の月刊詩誌、10月号が発売です。電子版は384ページになり、より www.youyour.me 近所を散歩している時に思いついた詩です。 よろしければご観賞ください。 今月も、佳作集投稿詩の作品についての感想です。 同都道府県在住の方々の詩を対象としてみました。 藤田健吾「水になりたかった朝」 不定形であることが定形のイメージである水のように、世界のイメージを捉えた詩ですね。水を通してものを見たら、光の屈折や水そのものの揺らぎによってものが歪んで見えるように、むしろ水そのものとして世界の歪んだイメージに没入していく感覚でしょうか。「方丈記」に「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という文がありますが、流れていった水たちは、この詩のように「何であるか」も変わっていってしまっているのかも。あるいはその変化は、詩の中でしか追いかけられないのではないか、という気もしてきます。余談ですが、詩中に「半永久的にむきだした安息角」というフレーズがありまして、「安息角」という言葉を調べてみたらば「(たとえば斜面の土砂などが)滑り出さない限界の角度」のことらしいです。こういう知らない言葉や言葉の使い方に出会えるのも詩の醍醐味のひとつですね。 sion「不可逆の環」 J・S・ミルは「自分は今幸福かと自分の胸に問うて見れば、とたんに幸福ではなくなってしまう。」と言いましたが、この詩でも幸福の形こそが個人を疎外している感覚を覚えることができます。「烙印」という言葉が出てきたのでスティグマ論を思い出しましたが、まさに烙印という傷は不可逆的かつ不可分的に存在に刻まれる傷です。罪人や奴隷であるという「しるし」は、それが焼き入れられたあとも、他者からのまなざしによって継続する痛みの在処なのでしょう。個人的に思ったのが、幸福のイメージに対して幸福の壊れたイメージを持ち出しても、それは幸福のイメージを壊したことにはならない、ということです。「壊れたイメージ」というイメージの形を再生...