夢を見た話
今日は水の底に沈んでいく夢を見た。 なぜ沈んでいたのかはわからないが、とにかく、いきなり沈んでいた。 酸素ボンベなど気の利いたものは何も身に着けておらず、息ができなかったので、水面から顔を出したかった。 しかし泳ぐことはできないと理解していたので、身じろぎもせず仰向けに、自分の体は沈んでいった。 沈んだまま周囲を見渡すと、遠くにアスレチックのような建造物ーー海底から水面まで螺旋状に伸びた塔のようなものーーが見えた。 そしてそれを底から上へ上へと伝っていけば、泳がなくとも水面へたどり着き、顔を出して息を継げると思った。 泳ぐことはできないので、一度体を水底に横たえてから、立ち上がり、抵抗を感じながらも、目標物へと歩みを進めた。 その間も、水を吸い込むわけには行かないので、口を固く結んだまま、息を止めていた。 焦る気持ちを抑えながら、息が切れてしまわないようにできるだけ早く、しかし水中なので動きは鈍く、建造物へと手をかけ、登り始めた。 両の腕は思うように素早く動かないが、少しずつ自分の体は上へ登っていく。 苦しいのだが、手を止めるわけにはいかない。 上がっていくほどに、自分の限界が近いことを感じる。 口を開いてしまうのが早いか、顔を出すのが早いか。 もう自分の頭の上から2メートルのところに水面がある地点で、息を止める限界がきた。 自分は口を開け、空気の代わりに大量の水を吸い込んだ。 と思ったら、いつの間にか自分は水上に半身を出し、息を吸い込んでいた。 飲み込んではいけないものを飲み込まんとして耐え続けていた時間の終わりが、飲み込んではいけないものを飲み込む終着を迎える覚悟の瞬間ではなく、長い間吸い込みたかったが吸い込むことを諦めたものを吸い込む驚きへと、突如として変化した。 自分はおそらく助かったのだろうが、しかしひょっとすると、戸惑いと、失望のほうが大きかったのかもしれない。 期待と不安、希望と絶望、唐突に突き落とされ、唐突に救われる瞬間。 継続した無力と努力、結実した努力と、徒労。 自分は、水に突き落とされたときに死んでいたのか、生まれていたのか。 水から顔を出したときに生まれていたのか、死んでいたのか。